自然界で起きている現象の中には、理論的にやるにしても実験的にやるにしても なかなか解明が難しいというタイプのものがあります。 計算物理とは、そのような現象をコンピュータを用いて調べるという研究方法です。 理論でも実験でもいろいろな分野があるように、計算物理にもいろいろな分野が あります。
例えば、2つのブラックホールが合体するようすを調べるには、
重力場の方程式を本格的に解かないといけません。しかし、その方程式は
非線形で、一般的に解く方法は知られていません。もちろん実験することも
できません。けれどコンピュータシミュレーションを用いれば、(理論的に解くほどは
厳密ではないのですが)調べることができます。
他の分野では、例えば人間の体の中で働いているタンパク質がその機能を発揮するには、
特定の形(丸まっているとか、らせん形になっているとか)を取る必要があります。
タンパク質の中で作用している力は量子力学で線形なのですが、非常に多くの原子が
あるので、解くことは困難です(実験はできます)。この問題を扱う上で
コンピュータシミュレーションは強力な研究手段です。
ここで行なっている研究テーマは、左の写真にある交通流、歩行者流、 生物の集団運動などです。車が増えるとどうして渋滞ができるのか、できる時と できない時はどう違うのか、人が折り重なって将棋倒しになる事故はどうして 起こるのか、魚の群れはどうしてできるのか、群れない魚とはどう違うのか、 といった問題に対して、物理学的なアプローチをしています。 この3つをセットにしているのは、もしかしたら自動車と人間と魚が、実は 同じ方程式に従って動いているという可能性があるからです。自動車と魚が 同じというのは面白いとは思いませんか?
これらの研究はいわゆる統計物理に比較的近いものです。 統計物理の研究も、昔からある平衡状態の物理から非平衡・非定常状態の物理へと 移行しつつあります。そのような流れに乗って、これまでに扱われていないモノや 現象を物理の研究対象にしようとする傾向が生まれています。上の研究テーマも その中の一つということです。物理、特に統計物理の言葉と解析手法を使って、 その性質を調べるという立場です。例えば、渋滞の発生を相転移として理解する などです。すごくいい加減な例えでは、対象を相転移とか秩序形成などの型にはめて、 複雑系とか自己組織化、自己相似、フラクタルといった味付けをして、 コンピュータに乗せて焼くとできあがりです。
この他にも、ここ何年か複雑ネットワークや経済物理なども流行っています。
時間があればこれらにも手をつけたいと考えています。
(が、時間がないのでできそうにない)
そのうちなんか書きます。
そのうちなんか書けるといいな。